CULTURE.NAGANO長野県文化芸術情報発信サイト

特集

長野県伊那文化会館を訪ねてみました!〜リニューアルオープン記念事業オペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)と新装されたプラネタリウム〜

長野県伊那文化会館を訪ねてみました!〜リニューアルオープン記念事業オペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)と新装されたプラネタリウム〜

南アルプス、中央アルプスに抱かれた伊那市。市民の憩いの場でもある春日公園の一角に、長野県伊那文化会館はあります。令和3(2021)年9月25日、オペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)が開催されました。この公演は、令和2(2020)年7月から令和3(2021)年2月に実施された会館の大規模改修を終えてのリニューアルオープン記念事業の一環でした。そして伊那文化会館と言えば、プラネタリウムがあるのが特徴です。こちらも改修によって最新機器を導入するなど、より快適な鑑賞環境になりました。オペラ公演とプラネタリウムの紹介を館長の北沢理光さん、プラネタリウム担当の松尾美恵さんのコメントを交えてお届けします。

来館者の安心安全への配慮や、ホールの音の響きを改善したリニューアル

昭和63(1988)年12月の開館から約30年が経過した伊那文化会館は、利用者の安全性の向上を図るため、次のとおり改修されました。

≪伊那文化会館リニューアルの主なポイント≫

① 大・小ホールの天井脱落対策
安心安全に利用できるよう、地震時に落下の恐れがある天井などを耐震性能のあるものに更新しました。

② 大ホール客席改修
より快適に鑑賞できるよう客席の配列を変更し、席幅を拡大しました。

③ プラネタリウム改修
伊那谷をイメージした内装に改修し、より快適に鑑賞できるよう席幅を拡大しました。
800万個の星が鑑賞できるようになり、改修に合わせてオリジナル番組も制作しました。

この改修では、南信地域のクラシック音楽の拠点として、これまで以上に、音の響きの良いホールへと生まれ変わりました。一方、演劇や講演会時には逆に音が反響しすぎるため、客席後方の壁にボタン一つで響きを調整できるカーテンも設置されています。

  • 長野県伊那文化会館を訪ねてみました遮音カーテンを使用しない場合
  • 長野県伊那文化会館を訪ねてみました遮音カーテンを使用する場合

リニューアルオープン記念事業の第1弾として開催された令和3(2021)年5月30日の『NHK交響楽団伊那公演』は、早々にチケットが完売。「素晴らしい演奏会だった」などの感想とともに、さっそくホールの響きの良さに対する評価がありました。

そして、リニューアルオープン記念事業の第2弾として、9月25日に上演されたのがリヒャルト・シュトラウス作曲の名作オペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)です。
伊那文化会館では、長野県や伊那市、地元関係団体などが協力して、南信地域における鑑賞機会の拡大を目的に、平成21(2009)年度から毎年、海外の名だたる歌劇場のオペラ公演を開催してきました。

  • 長野県伊那文化会館を訪ねてみました『NHK交響楽団伊那公演』のリーフレット
  • 長野県伊那文化会館を訪ねてみましたオペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)のリーフレット

オペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)は、本来は令和2(2020)年6月に開催予定だった「ばらサミットin伊那(第29回ばら制定都市会議)」に合わせて上演するべく、日本を代表するオペラ劇場「東京二期会」に制作を委嘱したものでした。コロナ禍のために「ばらサミットin伊那」は中止になりましたが、時を経て、リニューアルオープン記念公演として幕を開けることができました。

長野県伊那文化会館を訪ねてみました林正子さん(元帥夫人役)。素晴らしい歌唱力を発揮した

オペラ歌手の声やオーケストラの演奏が会場の隅々までくもりなく響いてきた

ハイライト(演奏会形式)とは、オーケストラはステージ上で演奏し、歌手が場面ごとに現れ、歌声で物語をつづる形式です。3時間以上の上演時間を誇る『バラの騎士』もわかりやすく、2時間の作品にまとめられていました。
筆者は2階後方センターに席を取りました。恋を謳歌することの楽しさを、高らかに響かせるようなオーケストラの華やかで美しい演奏がくもりなく届いてきました。

オペラ『ばらの騎士』は、18世紀のウィーンを舞台にした貴族たちのラブコメディです。冒頭、若い恋人オクタヴィアンとの甘い時間を過ごしながらも、避けられない老いの予感を内に秘めた元帥夫人の歌が波乱の展開を予感させます。オックス男爵との結婚の喜びを歌い上げるゾフィーと、彼女に一目惚れしたオクタヴィアンの二重奏は、輪唱のようなスタイルで恋の駆け引きと葛藤を表していました。自分本位で浅ましいオックス男爵ですが、そのバスの歌声はオペラ全体を引き締め、人間臭い存在感を発揮。終幕に歌われる三重奏は最大の聞きどころです。恋を謳歌する若い二人に対し、静かに身を引いていく元帥夫人の悲哀が対照的に表現されていました。
会場の隅々まで歌声をヴィヴィッドに届かせるオペラ歌手の凄みは圧巻でした。それは同時に伊那文化会館の大ホールのリニューアルの成果でもあるでしょう。

北沢理光(きたざわ りこう)館長は令和元(2019)年から伊那文化会館の館長に就任。伊那市に県立文化会館を誘致するため、昭和60(1985)年から、伊那フィルハーモニー交響楽団、いな少年少女合唱団やアルプス男声合唱団などを立ち上げて、誘致の機運を高め、先頭に立って地域における音楽文化の定着を図ってきました。

公演の感想を伺うと、開口一番「素晴らしい演奏、いい音だったでしょう。お客様が喜んでくださったのが何より」との言葉が返ってきました。

長野県伊那文化会館を訪ねてみました北沢館長。客席は舞台上の集中力が高まりそうな落ち着いた色に

北沢さん
「伊那文化会館の大ホールは、今までの1512席から工事によって1371席になりました。長野市のホクト文化ホールや松本市のキッセイ文化ホールは2000席規模です。当館では客席数の関係で採算が合わないため、人気アーティストの大規模なコンサートなどはなかなか実現できないかもしれません。でもクラシックの演奏にとっては、この規模がちょうどいい。奏者の手元も見えますし、音の響きがとても良くなりました。ここは子どもたちを含めた地域の皆さんと自地域の文化を掘り起こし、農村歌舞伎のようなこの地域の大切な郷土芸能を次世代につなげていく、地元に密着した活動を柱にすることができるホールとして頑張っていきたいと思います」

その言葉を証明するかのように、オペラ『ばらの騎士』ハイライト(演奏会形式)の公演には、着物姿の年配のご夫婦から吹奏楽部と思しき中高生まで、幅広い年齢層のお客様が来場していました。

プラネタリウムは星空などの自然環境の大切さと出会う場

伊那文化会館には、科学館や自然博物館に設置されることが多いプラネタリウムがあるのも特徴です。プラネタリウムの投映会は土・日曜・祝日限定で、午前1回、午後2回とそれぞれ違った内容の番組を定期的に入れ替えしながら投映しています(鑑賞の際は、事前予約が必要です)。

長野県伊那文化会館を訪ねてみました改修前まで使用されていた光学式星空投映機「GX-AT」が展示されている

伊那文化会館の2階に上がると、光学式星空投映機「GX-AT」が置かれています。開館当時から約30年、このプラネタリウムで星空を映し出してきた投映機です。そして、プラネタリウムの中に入ると、足元には、桜と天竜川をイメージしたカーペットが広がり、椅子は空をイメージした爽やかなブルーとなっており、伊那谷の自然をイメージした内装に新装されています。

長野県伊那文化会館を訪ねてみました新しい投映機「オルフェウス」が据えられたリニューアル後のプラネタリウム(画像提供:五藤光学研究所)

プラネタリウム専門の担当者である松尾美恵(まつお みえ)さんに、リニューアルについて伺いました。

「これまでのGX-ATでは、目に見える星がおよそ6500だったものが、オルフェウスでは何万もの星が映し出せるようになりました。明るい星の固有色を忠実に再現したり、天の川もかつてのフワッとした光の雲のようにではなくリアルに表現できるのです。また、近年のプラネタリウムでは、大画面の迫力ある映像番組を投映するようになりました。そうするとGX-ATのような大きな機材では、お客様が天井を見るときにどうしても視界に入って邪魔になってしまうんです。オルフェウスは非常にコンパクトで、昇降機もついているので、映像を遮らずに済むようになりました」

入口でお客様を案内していた松尾さんは、投映時間になると、投映機を操作しながら、秋に伊那市の空に見える星の解説を始めました。スクリーン一面に映し出されているのは、伊那文化会館の屋上で撮影した、この地域の風景です。「この時間に、この山の、この位置から、この星が上がってきます」という具体的な解説を聞いていると、思わず「今晩、確かめてみよう」という気持ちにさせてくれます。

長野県伊那文化会館を訪ねてみましたプラネタリウムのオペレーションも担当している松尾さん

松尾さん
「当館の特徴は、番組投映の前に、この地域で季節ごとに鑑賞できる星空をライブで解説していることです。自動音声でやっているところも多いのですが、当館はお客様の半数以上は地元の方やリピーターさんなので、地元のきれいな星空の魅力を工夫して伝えることを意識しています。星を見ることは、地元を考えることにつながります。自然環境が失われて、街の光がどんどん増えていくと星が見づらくなってしまいます。地元の自然に目を向けて大切にすることは、きれいな星を未来に手渡すことにつながるのです」

筆者が参加した午前の回は子どもが喜びそうな人気アニメでしたが、それぞれの回で違った番組が投映されます。内容は伊那文化会館のホームページで確認できます。

松尾さん
「番組は当館のお客様のニーズに合ったものを選んで、星の番組だけではなく、自然をテーマにしたものも投映しています。オリジナルの番組『宇宙に近い場所 ~上伊那で星を見上げて~』もありますので、ぜひご覧いただけたらと思います。子どもたちから感想文をもらうこともあるのですが、“今まで興味がなかったけれど星が好きになりました”とか、“これからは夜には星を眺めてみたいと思います”などと書かれていると、とてもうれしいです」

松尾さんのお話を横で聞いていた北沢館長も「星は老若男女が話題にできるもの。プラネタリウムをもっとPRして、いろんな世代に集まってもらい、ホールとともに地域の魅力を発見する場にできればと思います」と取材を締めくくってくれました。

伊那文化会館では、令和4(2022)年秋にはハンガリー国立歌劇場『魔笛』の公演が予定されています。改修により音の響きが格段に良くなったホールで、最高のオペラを体感していただきたいと思います。
また、地域の芸能が盛んな南信地域から地歌舞伎が集う『信州農村歌舞伎祭』の開催が、令和4(2022)年2月13日に予定されています。
加えて、美術展示ホールでは、毎年、企画展の開催など、伊那地域の盛んな美術活動も後押ししており、今回詳しくご紹介したプラネタリウムも含めると、とても幅広い間口から地域の皆さまに親しんでいただける施設です。
地域に根づく伊那文化会館の様々な活動に、引き続き関心をお寄せいただけたら幸いです。

取材・文:いまいこういち

伊那文化会館
伊那文化会館

伊那市西町5776

特集

カテゴリー選択

カテゴリーを選択すると、次回以降このサイトを訪れた際に、トップページでは選択したカテゴリーのイベント情報が表示されるようになります。
選択を解除したい場合は「全て」を選択し直してください。