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特集

八十二文化財団-文化を広く、深く探究し、 文化芸術の「学び」を支える

八十二文化財団-文化を広く、深く探究し、 文化芸術の「学び」を支える

長野県文化芸術情報サイト「CULTURE.NAGANO」は、公益財団法人八十二文化財団と連携して、掲載情報を構成しています。
八十二文化財団は、長野県内の文化芸術活動・文化財に関する調査・研究や情報収集・発信などを行うとともに、県内全域の文化施設と提携を結んできました。こうした蓄積が、八十二文化財団のホームページにデータベースとして整理されており、さまざまな人が活用しています。その一部を共有させていただき、「CULTURE.NAGANO」の文化施設情報やイベント情報として、皆さんにお届けしているわけです。
今回は、これまでの八十二文化財団の活動やその背景、関係の皆さまの声をご紹介します。

「長野県の芸術・文化情報センター」として

八十二文化財団は、1985年に、財団法人として設立されました。企業による社会貢献活動に注目が集まっていたころのことです。
八十二文化財団の定款では「長野県内の芸術、文化に関する調査研究並びに資料、情報の収集を行い、その成果を広く県民に公開するとともに、芸術、文化の普及啓蒙活動を通じて、地域の芸術、文化の振興と豊かで潤いのある個人生活づくりに寄与する」ことが目的と記されています。

八十二文化財団では上記に基づいた5つの事業が実施されています。

  • 「集う」~催しの開催~
    教養講座や文化講演会の開催 音楽家によるコンサートや地元の新人音楽家を中心としたロビーコンサートの実施
  • 「感じる」~コミュニケーションスペースの提供~
    「ギャラリー82」や「ギャラリープラザ長野」での展示、運営 世界や日本の貨幣、八十二銀行の歴史などを展示した「スペース82」、ならびに郷土文献、県内の市町村史を所蔵した「ライブラリー82」の運営
  • 「調べる」~芸術・文化にかかわる調査~
    芸術・文化、金融貨幣などの調査研究活動
  • 「深める」~出版・広報などの事業活動~
    機関誌『地域文化』、情報紙『催しのご案内』の発行 各種調査研究報告書や「ギャラリー82」で主催する企画展の図録などの発行
  • 「知る」~情報の収集と提供~
    文化に関する情報の収集 インターネットによる文化財・文化施設に関する情報提供
  • 岩渕元英常務理事
    岩渕元英常務理事

    「事業には調査活動、普及啓発活動と二つ大きな柱があります。調査を最初に挙げているのは文化発展のためにベースになる部分をしっかりと整えることに重きを置くという姿勢の現れです。設立当初より、さまざまな分野の文化事業をリードするのはその方面の業者であり、調査活動をベースとした『文化のリーダー』として地域の期待に応えることが目指すべき役割であるとしてきました。その基礎を固めた上で、次の段階として普及啓発のための講演やコンサートなどの事業が続くのです」

  • 清野真調査・総務グループ主任
    清野真調査・総務グループ主任

    「文化における社会貢献活動とはどういうことだろうという思考から始まったものだと認識しております。設立2年目には、文化全般に関する意識調査を実施して『長野県の郷土と文化』という冊子にまとめています。この調査結果が、財団としてどういう動きをするべきかの指針になったわけです。この調査は今も10年ごとに行われています。そうやって県民の皆さんの郷土や文化に対する考え方や行動の変遷を知り、また私どもの活動に活かしていくことになります」

取材に対応してくださった岩渕常務理事、清野主任の言葉からも伺えるように、長野県の文化、芸術をさまざまな視点から研究・分析したデータや知見が、八十二文化財団には蓄積されているのです。そして、それらをさまざまな媒体を通じて発信することで、「長野県の芸術・文化情報センター」として、文化のある豊かな暮らしづくりに貢献することを目指してきました。

機関誌『地域文化』は、独自視点による深掘りがユニーク

公益財団法人八十二文化財団の運営は、八十二銀行からの寄付、個人・法人会員による「友の会」の会費によって賄われています。会員になると財団主催の催しへの優待、提携文化施設の催しの割引などの特典がありますが、季節ごとに届けられる長野県に関係の深い人物・産業・自然などを特集した機関誌『地域文化』は特に見逃せません。

機関誌『地域文化』
機関誌『地域文化』

たとえば2019年は春号「観光」(128号)、夏号「山村留学」(129号)、秋号「中野」(130号)、冬号「雷鳥」(131号)といった特集が組まれました。表表紙・裏表紙の内側を含めた34ページのうちの4分の3近くが特集記事に割かれています。編集方針は3年ごとに決められますが、現在は「地域を知り、明日を考える」がテーマで、交流、自然、継承、伝承などのキーワードが盛り込まれています。「文化」という言葉の捉え方も幅広く、切り口も多様なところがユニークです。

129号の「山村留学」特集では、全国に先駆けて40年前から山村留学を始めた「公益財団法人育てる会」の歴史と活動にスポットを当て、また、子どもたちと地域の交流についても紹介しています。都会からやってきた子どもたちの生き生きとした表情の写真が目を引きます。そして“子どもたちと地域の交流”の向こう側に、文化や伝統にとって大切なものが浮き彫りにされています。
130号の「中野」特集は、社会や大きく揺れ動く時代の中で、中野市に11カ月しか置かれなかった県庁の移転に関する内容が興味深いものでした。

多売することを目的にはしていない冊子だからこそできる、独自の視点で丁寧に取材した厚みのある内容は、文化はもちろん、まちづくり、人びとの営みなどに興味のある方にもぜひ読んでいただきたいと思います。

編集に携わっているお二人に、『地域文化』において、長野県の文化をどう捉えているかを伺いました。お二人はそれぞれ夏冬号、春秋号を担当し、季節感も意識しながら長期的な取材で『地域文化』をつくり上げています。そして常にアンテナを張りめぐらせ、長野県内を飛び回っています。

  • 齋藤崇さん(『地域文化』編集担当)
    齋藤崇さん

    地域の文化、固有の文化は今や失われつつあると感じています。日本全体が同じような街並みになり、生活も平均化されています。文化とは地域の風土、人の営みによって生まれ、それがどう伝えられていくかというものだと感じます。地域の文化は今や形がい化し、行事やイベントになりがちです。昔はそこに人びとの生活と密着した精神的な意味が重要なものとしてありました。本来はそこにあるはずなのに失われそうな大切なものこそ、『地域文化』で残していかなければいけないものだと思っています。文化や自然が失われつつある大切なものを、『地域文化』では35年もの間ずっとクローズアップしてきました。私たちもその精神を継承しながら編集をしていきたいと思っています。

  • 内山恵美子さん(『地域文化』編集担当)
    内山恵美子さん

    世の中でブームと言われているものも、続いていけばそれは一つの文化になるのではないでしょうか。それらは土地があって、人がいてこそ起こるもので、風土や気候というエッセンスによって特有になる。それが私の文化に対する考え方です。さらに世紀を超えて脈々と続くと、伝統になっていく。途切れることも、変化することもあるかもしれませんが、それもまた文化だからこそ。そして文化をつないでいくのは人だと思います。文化は人の生活の営み、生活から生まれるからこそ、広がり、伝わっていくものなのです。この仕事をしながら今、その流れを感じているところです。担当になって、まだ1年にならないのですが、これまで『地域文化』に携わってきた編集者の思いを大切につないでいきたいと思っています。

長野県全体を俯瞰できるデータベース

八十二文化財団のホームページ八十二文化財団のホームページ

八十二文化財団のホームページは、信州の文化に関するデータの宝庫です。県内の隅々にわたる文化財や文化施設などの情報が集められ、調べやすく整理されています。検索機能の利便性が高いことから、実は筆者の私も、文化情報を調べる際、日常的に八十二文化財団のホームページを利用しています。

文化財や文化施設の登録情報は、定期的に状況を確認し、更新しているのだそうです。こうした派手ではない地道な積み重ねによって、データベースが維持されています。県内の民俗芸能や伝統芸能などが検索でき、学びや調べものに便利なホームページですが、開催時期や会場も記されており、お出かけのスケジュールを考えるにも便利です。
文化財などの情報を掲載している市町村のホームページも増えていますが、八十二文化財団のホームページで長野県全体を俯瞰できることにより、県内の各地域特有の文化の違いや関連性といった、さまざまな気づきを得ることができるかもしれません。

「CULTURE.NAGANO」は、八十二文化財団と連携し、地域の文化を知り、学ぶ機会を広げていきます

長野県文化芸術情報発信サイト「CULTURE.NAGANO」は、八十二文化財団と連携を図りながら、より幅広い分野や活動にもスポットをあて、県内の文化芸術情報を発信していきます。

「CULTURE.NAGANO」に掲載している特集記事や催事情報から、県内の文化財、文化施設に関心を持った方は、八十二文化財団のデータベースや調査研究を活用して、より深く「学ぶ」こともできるかもしれません。

まずは皆様がお住いの地域の情報を検索してみると、実は意外にも、多くの文化財や文化施設があり、それらを見過ごしていたことにお気づきになると思います。

このような気づきを通じて、多様な本県の文化芸術を知り、学んでいただけましたら幸いです。

取材・文:いまいこういち(サイト・ディレクター)

八十二文化財団「友の会」入会特典の1つ「提携文化施設ガイドブック」
八十二文化財団「友の会」

八十二文化財団「友の会」では、長野県内各地での催しの開催や、文化情報の提供などによる活動を通して、豊かで潤いのある生活づくりのお役に立ちたいと願っております。皆さまのご入会をお待ちしております。

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