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アートフォト×御代田町らしさ 町民とともに拡げる浅間国際フォトフェスティバル

アートフォト×御代田町らしさ 町民とともに拡げる浅間国際フォトフェスティバル

「浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA」が、2026年9月27日まで、長野県御代田町のMMoP(御代田写真美術館)を中心に、町内5カ所で開催されている。このイベントは浅間山麓の自然あふれる環境のもと、気鋭の作家から国際的に活躍する作家まで、国内外の写真家の作品を展示するアートフォトの祭典だ。

御代田を写真の町に-郊外型のフェスティバル

2018(平成30)年に第1回を開催、コロナ禍の中断を挟んで第7回となる今回のテーマは、「After the Image | イメージのその後」。写真という表現メディアが誕生したのは約200年前と言われるが、「写真=シャッターを押すことでできる図像」という概念から、近年はカメラを使わずGoogleストリートビューやAIを使用して「写真」作品をつくったり、プリントした写真に刺繍のような手作業を加えるなどさまざまな加工を施したりと、現在、写真における表現は実に多岐にわたっている。また同時に家族アルバムのように、撮影された時代と後年とで、読み解かれ方が変化し、異なる意味を帯びるメディアでもあるという性格も、写真は持つ。

  • 写真:浅間国際フォトフェスティバルMMoP 野外展示(提供:浅間国際フォトフェスティバル)
  • 写真:浅間国際フォトフェスティバル御代田写真美術館内(提供:浅間国際フォトフェスティバル)

そのような観点のもと、今回MMoPには19組の作家が出品。昔の家族アルバムと新しく撮影した写真をコラージュしたヘンリエッテ・サブロー・エベセン、アメリカの写真家ウォーカー・エバンスの有名な写真に似せた画像をAIに1万枚以上生成させたAphic、複数の写真を手作業によってピクセル単位で編み上げるようにひとつの作品を制作した顧剣亨など、鑑賞者は屋内施設のほか、MMoPのガーデンなど敷地をめぐりながら、さまざまな作品を味わうことができる。

「日本では、こうした郊外型のフォトフェスティバルが馴染むのでは」と語るのは、フェスティバルの第1回目からディレクターを務め、また写真雑誌『IMA』編集長でもある、太田睦子さん。同誌を発行する株式会社アマナ(本社:東京都品川区)は、2015(平成27)年に「写真をテーマにしたまちづくり事業」として御代田町と協業を開始し、町から土地建物を貸与されるかたちで2021年にMMoPをオープンした経緯があるが、太田さんは同社の社員であり、2024年からMMoPを運営する一般社団法人MMoPの理事も務めている。

写真:浅間国際フォトフェスティバルディレクターの太田睦子さん

太田さん
「アマナが所有する約1000点の写真コレクションを展示・保管する場所を探すなかで、旧メルシャン軽井沢美術館(2011年に閉館)の跡地が御代田町に売却されたことを知り、アマナから町に声をかけさせていただいたんですが、美術館の空調や照明を修繕する必要があり、すぐには開館できなかったんです。
一方海外では、フランスのブルターニュ地方で開催される『ラ・ガシー』という写真展のように、人口5000人くらいの小さい町でも3カ月の開催期間で40万人を動員している例もある。日本では作品を収集するコレクターの数が少ないためアートフェアを開催するのは難しいけれど、老若男女、アートに詳しくない人たちも楽しめるフォトフェスティバルなら可能性があるんじゃないか、御代田で美術館を始める前にフェスティバルを通して『御代田は写真の町だ』という認識を定着させることができるんじゃないか、と思ったんです」

太田さん自身、キュレーションの教育を受けたわけではなかったが、『IMA』誌を通じて国内外の写真家とのつながりがすでにあったこと、またアマナが超高解像度でプリントできる設備を自社で購入していたことも要因となり、フェスティバルの初期から森山大道やロジャー・バレンなど国際的な写真家にも出品してもらえたという。以来、継続的な積み重ねが実り、昨年は約50日の期間中に約3万3000人を動員。夏の恒例イベントとして、御代田町に定着しつつある。

太田さん
「『国際フォトフェスティバル』を打ち出す以上、インターナショナルで、かつ、写真界にきちんと位置づけられた作家を第1回からブレずに選んできました。確かに、『こんなわかりづらい写真じゃなくて、きれいな風景写真にしてくれ』と言われたこともありますが(笑)、『必ずしもきれいだからいいということではない』『作品を読み取っていく面白さもある』と丁寧に伝え続けることで、抵抗が薄れてリテラシーも上がっていく。いまでは小園拓志御代田町長も、『100年続くフェスにしましょう』と応援してくれています」
それに、フェスティバルには毎年約20人、開催7回で約140人の作家がかかわっています。彼らは実際に御代田に来て、『すごくいい場所ですね』『こんな場所で展示できるのはうれしい』と言ってくれる。世界中で活動している彼らが御代田の名前を知ってくれているのは、すごく大きいと思います」

町全体を人と経済がめぐるために

今年の大きなポイントは、MMoPだけでなく、町役場や公民館をはじめ町内4カ所をサテライト会場として、複数会場にまたがって開催していることだ。うち、町の文化施設「まなびの館 エコールみよた」と、民間が運営するコワーキングスペース「Gokalab」では、町民が「ディレクター」となって企画展を開催している。

  • 写真:浅間国際フォトフェスティバルミヨタデザイン部による作品(エコールみよた)(提供:浅間国際フォトフェスティバル)
  • 写真:浅間国際フォトフェスティバルGokalabの展示風景(提供:浅間国際フォトフェスティバル)
  • 写真:浅間国際フォトフェスティバル白井晴幸さんの作品(御代田町役場)(提供:浅間国際フォトフェスティバル)
  • 写真:浅間国際フォトフェスティバル町民ディレクターの皆さん(提供:浅間国際フォトフェスティバル)

太田さん
「『浅間国際フォトフェスティバル』という名前の通り、御代田町だけでなく近隣の町も巻き込んで、もっと大きい規模で回遊するフェスティバルにするという目論見が、当初からありました。実際、これまでに軽井沢や小諸でも展開したことがありますが、御代田では、MMoPの施設内だけでなく町に進出して、町全体で写真展を開催しているように、町を巻き込んでいきたい」

こうしたサテライト展の実現に大きくかかわっているのが、フェスティバルを主催する実行委員会のメンバーの一員でもある、御代田町産業経済課地域振興係だ。担当のひとりである同係長の八巻恵子さんがフェスティバルにかかわるのは、今回で3回目。通常業務である移住促進のかたわら、フェスティバルではアルバイトの管理などの運営やグッズ制作などを担うほか、フェスティバルのキービジュアルを選定する話し合いにも参加した。

写真:浅間国際フォトフェスティバル御代田町産業経済課の八巻恵子さん

八巻さん
「フェスティバルを通した地域内の回遊性の向上や、地域経済が回る仕組みの構築は、課題でもありました。それから、『アートフォト』という打ち出しによって、東京からのお客さんは多いんですが、町民にとっては敷居が高くみられることもあるので、もっと親しみやすいフェスティバルにしたかったんです。
『フェスティバルにかかわりたいけど、どうしたらいいかわからない』という人もたくさんいると聞いています。フェスティバルに遊びに来るだけでなく、どれだけ町民を巻き込めるか、どれだけ広げられるか、というところで、今年から少しずつシフトしていきたいと思います」

MMoP以外のサテライト会場で町民を巻き込んだ企画を行うのは今回が初めての挑戦だったが、例えば、まなびの館 エコールみよたで開催している「0-100 MIYOTA YEARS」では町の図書館にしかない昔の図録に載っている写真を探したり、御代田社会福祉協議会と連携しながら被写体を募集してデイサービスに通っている100歳の方に参加してもらったりと、役場だからこそ可能な支援を行った。出展作家が町に滞在して作品制作を行うアーティストインレジデンスも、町からの発案だ。

町内に巡回バスが運航していない、電動自転車の貸し出しはあるが期間中は暑さの問題があるなどの課題はありながらも、「『町としては、こういう取り組みをしたい』と、ディレクターの太田さんたちに提案しています」と八巻さん。ディレクターの太田さんを含めたメンバーで、毎週定例での打合せを早い段階から実施するなど、課題に向き合えるよう改善したことも、コミュニケーションの後押しになっているという。

八巻さん
「今年度の文化庁文化芸術創造拠点形成事業の採択のときにいただいた有識者からのコメントがすごく勉強になったんです。『東京にあるものをただ持ってきただけでは、町が消費されて終わる。そうではなく、御代田町らしさ、御代田町でしかできないこと、なぜ御代田町でやるのか、というところを、考えたほうがいい』と」

  • 写真:浅間国際フォトフェスティバルクリエイティブスタジオKonstと御代田町に住む障がいのあるクリエイターが行った創作ワークショップから創られた作品(提供:浅間国際フォトフェスティバル)
  • 写真:浅間国際フォトフェスティバル顧剣亨さんの作品(MMoP野外展示)(提供:浅間国際フォトフェスティバル)

御代田らしさとは?“町民の誇り”を目指して

現在、日本では各地で芸術の国際展が開催されている。写真展では、2013(平成25)年から京都を舞台に毎年開催されている「KYOTO GRAPHIE 京都国際写真展」が近年の好例として知られるが、北海道東川町で1985(昭和60)年から続いている「東川町国際写真フェスティバル」のように、長期的に取り組むことで町内の店舗数が増えるなど町自体が変化しているケースもある。

いずれも、観光需要や経済効果だけでなく関係人口増加、移住定住などにつなげる施策にもなっているのは確かだが、特に普段から芸術文化に親しんでいない人からすれば、「芸術祭の数が多すぎて差別化しにくい」と受け取られている側面も否めない。では、御代田らしさとは何か?

八巻さんは町の特徴のひとつとして、MMoPという場所があることを挙げる。

八巻さん
「町としては町のことを知ってもらい、関係人口だけでなく最終的には移住定住につなげるのが長期的な目標の一つ。その点で、MMoPは町外・県外の認知度や集客力が高く、中には文化芸術という視点からMMoPを理由に移住を決める方もいるなど、町に貢献してくれています。だから町としてもフェスティバルを機にMMoPのなかに気軽に入ってもらいたいし、一緒にフェスティバルを盛り上げていきたい」

写真:浅間国際フォトフェスティバルメインヴィジュアルを手掛けたヘンリエッテ・サブロー・エベセンさん(中央)(提供:浅間国際フォトフェスティバル)

最後に今後の展望を聞くと、八巻さんも前述の太田さんも、シビックプライド=町民の誇りになることと、と語ってくれた。特に太田さんは、フェスティバルの初期に高齢の女性から「メルシャンの美術館がなくなって本当に寂しかったから、こういうことをやってくれて本当にうれしい」と感謝を伝えられ、地域に文化があることの重要性を痛感したという。

太田さん
「『税金をムダ遣いして』『東京からよくわからない会社がやってきて、いきなりこんなことやって』と思う人もいるわけじゃないですか。だけどいまや、『御代田って知ってる?』『フォトフェスやってるとこでしょ?』って子どもたちが言うくらいになっている。だからやっぱり、長く続けていくことがすごく大事だし、それによって町の方に誇りを持ってもらえるような存在になれたらと。
特に写真は、見れば見るほどいろいろとわかって、面白くなってくる。そういう機会が増えて、町の方たちが写真についていろいろ語り合ったりするような場所として、『浅間国際フォトフェスティバル』やMMoPが機能するといいと思います」

取材・文・インタビュー撮影:岡澤浩太郎

浅間国際フォトフェスティバル
2026年8月1日(土)~ 9月27日(日)
開館時間:10:00〜17:00(展示室入場は16:30まで)
会場:MMoP ほか御代田町内各所(御代田町役場、エコールみよた、Gokalab、西軽井沢第二公民館)にて展示
チケット:1,500円(会期中何度でも利用可、小学生以下無料、中学生・高校生・障害者手帳をお持ちの方は割引あり)
一部無料エリアあり

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